「すごい! これは何としても行かなくては!」
いつもは入れない非公開エリアが、9年ぶりに公開されると聞いて、早速行ってきました。
『姫路城の「待合室」、折廻り櫓 2月に公開』
お目当ては「折廻り櫓」の内部公開でしたが、石垣の修理をしているエリアで「現地説明会」があるとのこと。運よくこちらも見学できました。
今回は、貴重な非公開の「折廻り櫓」の特別公開についてご紹介します。
折廻り櫓(おれまわりやぐら)
折廻り櫓は、姫路城の東側にある国の重要文化財の建物です。
姫路城に行ったなら、「天守」見学のあとは「備前丸」の撮影ポイントで一番上の写真のような大迫力の写真を撮って、「備前門」を通って帰路につくのが一般的なルートですね。
その備前門と大天守の間に寄り添って建つのが、今回公開された折廻り櫓です。
一直線の建物なのに、どうして『折廻り』という名前なのでしょうか?
特別公開のチラシによると、こんな理由だそうです。
折廻り櫓の名前は、当初、この櫓が西側の大天守に接する場所で南に折れ曲がって櫓が続いていたことに由来していますが、この部分は明治43年(1910)の修理の時に取り除かれました。
この櫓がつくられたのは、1600年代の初めごろ。
池田輝政が城主の時代に、備前丸にあった御殿の一部として建てられたと言われています。
関ヶ原の戦いの後とは言え、まだまだキナ臭い、いつ戦いが起こってもおかしくない時代です。
そんな時代だからこその防御の仕組みが、折廻り櫓には散りばめられていました。
備前丸側から折廻り櫓を眺めると、2重2階の白漆喰の建物の姿をしています。
1階は東室と西室の2部屋があって、それぞれの部屋には階段があります。
最初に入る部屋は西室。入るとそこは、窓がない薄暗い空間でした。
実は、この折廻り櫓。
備前丸側以外の3方向は石垣に囲まれていて、穴蔵のような構造なのだそう!
折廻り櫓の西側は、大天守の石垣に接しているので石垣なのはわかります。
北側は、現在、天守や折廻り櫓の北側が入場禁止なので、そちら側を見ることはできませんが、きっと上の写真のように1階部分が石垣になっているのでしょう。
つまり備前丸からは2階建てに見える建物は、それ以外の場所からは石垣の上に建つ平屋の建物に見えるのです。
このような仕組みなのは、折廻り櫓が防御のためにつくられた櫓だからです。
どうしてこの場所が防御のために必要なのかは後ほど説明するとして、まずは1階の様子をご紹介しましょう。
こちらは東室にある釣棚(つりだな)の様子。案内板にはこう書かれていました。
東室にある釣棚は、昭和の大修理の際に復元されたもので、西室は、釣棚はないものの基本的な構造は東室と同様、ともに備前門に付属する武器や諸道具等を収納する倉庫として利用されていたものと推測される。
この棚いっぱいに武器が! 鎧や兜もあったかも……なーんて妄想でひとりワクワク。
見てみたかった2階エリアに向けて、ますます期待が高まります。
来ました!
こちらは炉のある2階の西室。畳敷きで襖や障子もある住宅風の空間です。
実はこの部屋、どんな目的で使われていたのかは、はっきりしていないそう。
櫓にいたガイドさんは「備前丸の対面所に来た大名の付き人を接待した部屋だったのではないか?」と話されていました。
なるほど。大名の接待部屋にしては簡素な印象だったので、大名の付き人ならばありえるかもしれません。面白いですね。
障子に使われている紙は、公開にあわせて市民が手すきで作ってくださったものだそうです。
こちらは2階東室。床は保護のためでしょうか、カーペットが敷かれていました。
雅な住宅風のつくりですが、窓枠に鉄格子が設置されるなど、防御の仕組みは万全です。
障子の下の壁面にご注目ください。壁に見える四角い枠は、ふた付きの狭間(さま)です。
狭間とは、侵入する敵に対して鉄砲などで攻撃するための防御設備で、2階の全ての部屋に狭間が装備されていました。
居室に狭間があるのは、姫路城でも珍しいそうです。
こちらは2階中室の窓の様子です。(ピントがズレてます 汗)
この黒い柵は「筬格子(おさごうし)」と呼ばれる鉄製の柵です。
柵の間隔は1cmほどなので、部屋からの視界ははっきりしていますが、外からは見えにくい仕組みになっているそう。窓枠の下には、もちろんふた付きの狭間が多数ありました。
これほど防御性の高いつくりをしている理由は、折廻り櫓の建つ位置にあるようです。
上の写真の、右手の櫓門は「との一門」です。そして左手の小さな門は「への門」です。
「との一門」をくだった先は、「との二門」から「との三門」、そして搦手(からめて・裏手のこと)の「との四門」へと通じています。
一方「への門」を進んでいくと、すぐに天守群の裏手に到達してしまいます。
そして搦手から天守に向かう途中にあるのが、この折廻り櫓です。
つまり折廻り櫓は、搦手から侵入する敵を食い止めるという、とても重要な役割を担っていたのです。
そのために多くの狭間や鉄格子など、防御性が高い構造をしているのですね。
この穴は、何でしょうか?
これは、櫓の窓枠に空けられた穴です。この穴の先に、下の写真のような筒がついています。
これは、窓に入って来た雨水を排水する、水抜きのパイプです。
このパイプは、折廻り櫓だけでなく大天守やほかの建物でも見ることができます。
ガイドさんによると、屋根や瓦を修理できるように、大天守には出入りできる窓が各階に1ヶ所あるそうです。
その窓の仕組みや水抜きパイプのように、お城を長持ちさせる工夫や修繕する工夫が、昔から考えられていたのですね。本当にすごい!
折廻り櫓の内部公開は、2018年2月1日〜28日の1ヶ月間です。
ぜひこの貴重な建物の、防御の仕組みと工夫されたメンテナンス機能を体感してくださいね。
では、また!