2月1日から28日までの期間に開催されている「姫路城の冬の特別公開」へ行きました。
姫路城では、例年冬に特別公開が行われていて、非公開エリアに立ち入ることができるという特別な体験ができます。
2021年の特別公開エリアは
特別公開は、「ぬの門」と「リの二渡櫓」です。
同時に開催されている「大名行列拝観」が「リの一渡櫓」と「チの櫓」で展示されているので、このエリアにも立ち入ることができました。
公開のルートは、リの一渡櫓→リの二渡櫓→ぬの門の順番に回ります。
リの一渡櫓~リの二渡櫓~ぬの門は、外から見ると繋がって建っているように見えるのですが、内部はそれぞれが連結しておらず独立した構造をしていたのが驚きでした。
まずはじめに、リの一渡櫓の入口で観覧料(大人¥300)を支払って入ります。
リの一渡櫓・チの櫓
「リの一渡櫓」と「チの櫓」では「大名行列拝観」と題して、参勤交代の大名行列の様子やその時に使われた道具などが展示されていました。
大名の石高によって従者の人数が定められていることなど興味深い資料もありました。
格式を重んじる江戸幕府と、それを強いられる大名家の肉体的・金銭的苦労はどれほどのものだったかと想像して、弱小藩を描いた「超高速!参勤交代」の映画を思い出しました。
展示に目が行きがちですが、滅多に入れない櫓の中にいるのですから、建物内の様子をつぶさに観察しましょう。
柱に注目すると、美しい「手斧(ちょうな)削り」が施されています。
手斧削りとは、「手斧」によって魚のウロコのような模様がつけられた削り方のこと。
この手斧削りによって、例えば床に使って歩くときに滑らないようにしたり、彫刻のような独特な削り方でデザイン性のある柱や梁をつくり出します。
『手斧とは、カンナがまだ無い時代に荒削りした材木を平らに仕上げる大工道具のこと』(woodoneのサイトより)
このイラストの、カーブを描いた柄をした工具が「手斧」です。
後述する「ぬの門」の柱は、手斧削りではなくカンナで表面が整えられていました。
リの一渡櫓やリの二渡櫓は手斧削りの柱なので、木材の加工の様子を考えると、ぬの門より古い時代にできた建物かもしれません。
けれど、外観がひと続きに繋がっているリの一渡櫓・リの二渡櫓・ぬの門なので、もし同じ時代に建てられたとしたら、どうなるでしょう。
私の想像ですが、リの一渡櫓やリの二渡櫓の手斧削りは、石垣に施された「すだれ仕上げ」や「はつり仕上げ」のお化粧のように、あえて手斧削りを施して柱を彩る装飾にしたのではないかと思うのです。
建てられた時代や改修した記録など詳しいことはわかりませんが、そんな風に想像してみると、リの一渡櫓やリの二渡櫓は防御のための役割だけでなく、何か特別な役割があったのかもしれません。
これらの櫓や門がいつ建てられたのか調べてみたいと思いました。
「チの櫓」はリの一渡櫓からひと続きに繋がっている建物です。
展示の見学はできますが、チの櫓の中には入ることができず、リの一渡櫓側から覗き込むような形で展示と内部の様子を見学しました。
出入口を除いて「リの一渡櫓」と「チの櫓」には、城内側(上山里曲輪側)に窓はありませんでした。これは「リの二渡櫓」でも同様の構造です。
リの二渡櫓
パンフレットによると「リの二渡櫓」は、2階建ての建物で、1階の城外側は石垣が築かれ室内は穴蔵になっているそうです。
酒井氏の時代には、火薬の原料となる苧殻(おがら)を貯蔵していた時期もあるそうです。
リの二渡櫓の南側の部屋は戸口が開放されていて、いつも歴代の大天守の鯱が展示されています。
今回公開されているのは、ぬの門に隣接する北側のリの二渡櫓の2階部分だけです。
リの二渡櫓でも美しい手斧削りの柱を見ることができます。
いつもは見上げる「扇の勾配」の美しい石垣が、目の前にあります。
このリの二渡櫓は、「いの門」から「三国堀」の裏手を通って「備前丸」方面へ向かう通りに建てられています。
リの二渡櫓から見下ろすと、埋門の「るの門」の真上に建物があることに気づきます。
この写真からもわかるように、いの門から向かってくる敵兵と、「菱の門」から三国堀の脇を通って、るの門から攻め入る敵兵の、2方向を防御するための櫓だということが理解できるでしょう。
リの二渡櫓の一部の窓には格子がなく、西の丸まで見渡せる絶好の場所に建っています。
この場所に立って眺めるからこそ、奥深い防御の仕掛けを目の当たりにできるのだと思います。
ぬの門
「ぬの門」は、櫓部分が2階建てになっているとても珍しく貴重な城門です。
ぬの門の構造には驚かされました!
下層と上層階はそれぞれ独立した構造で、出入口も別々でした。
上層階の出入口は上の写真の○印のところにあって、人面石(鏡石)ある石垣の上側から出入りする構造です。
内部にも、もちろん外部にも階段はありません。
リの一渡櫓は二階に上がる階段があったように思います。
城外側(扇の勾配側)の窓には、鉄格子が使われていました。
城内側(上山里曲輪側)の窓は、木製の格子がついており、城外・城内ともに障子の貼られた引き戸がついていました。
ぬの門で特に注目したいのは「隠し石落し」の存在です。
ぬの門と一体化になって見つかりにくいよう、また防御のために、外側は鉄板が貼られています。蓋の厚さは2寸(約6cm)あるとのこと。(現地スタッフさんより)
こちらが隠し石落しを外側から見たもの。
非公開の上層階の出窓の下にも、隠し石落しがあるそうです。
外側からはわかりにくいですが、ぜひ行った時にはチェックしてみてくださいね。
ぬの門は、要の門だけあって技巧を凝らした構造でした!
次の特別公開を勝手に予想
来年2022年の特別公開はどこになるでしょうか?
まだまだ先のことですが……勝手に予想してみたいと思います。
2022年に特別公開されるのは「にの門」だと予想します。
なぜ にの門かというと、現在改修中だから。
今年公開された「ぬの門」も、前年に改修が行われていたからです。
にの門は、内部で直角に折れ曲がる、二重櫓が付いた櫓門です。
天守群に入るために必ず通るこの門の、内部の構造がどうなっているのか、ぬの門のように2層は階段で繋がっているのか独立しているのか、そんなカラクリを見てみたいです。
非公開エリアもまだまだありますから、いろいろな場所を見てみたいですよね!
Photo gallery
コロナや緊急事態宣言で遠方に行けない方も多いと思いますので、せめて写真だけでもお楽しみください。
では、また!