古墳って、お堀もあって小高い丘のような形だから、お城みたいに見えるわ!
なるほど! 広い水堀と小高い丘ならお城のつくりと似ているかもしれませんね。
昔の人は古墳をお城に利用しなかったのかな?
古墳に行ったとき、こんな疑問を持ったことはありませんか?
お堀に守られた小高い丘ならば、お城として、もしくは簡易的な砦として便利だったかもしれませんね。
大型の古墳であれば、本丸だけでなく複数の曲輪もつくれそうなサイズ感でもあります。
古墳がお城だった事例はないのだろうか? という素朴な疑問を調べてみました。
今回は「古墳を活用したお城」についてご紹介します。
大仙陵古墳(大阪府堺市)
全長486mの「大仙陵古墳」は「仁徳天皇陵古墳」とも呼ばれ、第16代の仁徳天皇が葬られているとされる世界最大の前方後円墳です。
エジプトのピラミッドや中国の始皇帝陵と並び「世界三大墳墓」のひとつに数えられる大仙陵古墳は、2019年には「百舌鳥・古市古墳群」として世界遺産にも登録されました。
前方後円墳は、方形墳と円墳をつなぎ合わせたような鍵穴型の古墳で、その周囲は深い水堀に囲まれています。
日本城郭体系で調べてみると、大仙陵古墳は、戦国時代に三好氏が「国見山城」として利用していたことがわかりました。
三重の堀に囲まれた大仙陵古墳は、お城に相応しい構造だったのかもしれません。
恵解山古墳(京都府長岡京市)
大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公:明智光秀は、本能寺の変のあとの山崎の戦いで、天王山近隣の古墳に本陣をおいたと言われています。
全長128mの「恵解山古墳(いげのやまこふん)」は、その推定地のひとつと言われる前方後円墳。
いまは整備されて公園になっていますが、当時の小高い丘状の古墳と水堀は、軍事施設として充分に機能していたと考えられますね。
古墳に登ってみると、前方には天王山の山並みが確認できます。
山崎の戦いの舞台になった大山崎の地を挟んで、秀吉は天王山の山頂に本陣を構えました。
対峙する秀吉がいる天王山を、光秀はどんな気持ちで眺めたのでしょう……。
歴史的なこの場所に立ち、想像してみてはいかが?
応神天皇陵(大阪府羽曳野市)
光秀の主君だった織田信長も、古墳をお城として活用していました。
世界遺産に登録された古市古墳群にある「応神天皇陵」を、信長は「誉田城(こんだじょう)」として城砦化しました。
全長425mの応神天皇陵は、世界遺産に登録された古墳群の中で2番目に大きな前方後円墳です。
誉田城から2kmほど北にある「安閑天皇陵」は「高屋城」の本丸とされています。
大坂本願寺と同盟した三好康長は高屋城に入り、誉田城の信長と戦ったそうです。
残念なことに、誉田城や高屋城は天皇陵のため立ち入りが禁止されているので、その詳細ははっきりしません。
発掘調査が可能ならば、中世の武具や鉄砲の弾と言った「歴史的なお宝」が見つかるかもしれませんね。
今城塚古墳(大阪府高槻市)
全長354mの「今城塚古墳」は、第26代:継体天皇の陵墓と推定されていますが、宮内庁の認定する公式な天皇陵ではない古墳です。
そのため古墳は公園に整備され、前方後円墳の上を散策することができます。
歴史学者の磯田道史氏は「会いに行ける天皇陵」と紹介されていました。
今城塚古墳は、織田信長が三好氏を攻めた永禄11年(1568)の摂津侵攻のときにお城に活用したとも、松永久秀が城砦化したとも伝わります。
天皇陵と認定されていないため、発掘調査ができるのも今城塚古墳の魅力です。
古墳の外濠からは鉄砲玉が見つかっているそう!
今後の調査によって、戦国時代の古墳活用の様子が明らかになることに期待したいですね。
まとめ
そのほかにも、大坂の陣のときに徳川家康や真田幸村が陣を置いた「茶臼山古墳(大阪市天王寺区)」や、上杉謙信や石田三成が陣を置いた「丸墓山古墳(埼玉県行田市)」など、調べてみると意外とたくさんありました。
古墳に盛り土をするため、土を掘ったことで堀ができました。
堀は、人が簡単に入らないようにするバリケードの意味合いもあったようです。
古墳は軍事施設のお城として造られたものではありません。
けれど、盛り土をした小高い丘と堀もあるその構造が、結果として戦国時代の猛者たちにとって恰好のつくりだったのでしょう。
建設機械も何もない時代にお城を一からつくるということは、想像以上に時間と労力のかかる大掛かりな工事だったはずです。
身近にあるものを活用した、その知恵に感服しました!
古墳時代というと、随分と昔の、遠い世界のように感じるかもしれません。
けれど、戦国時代に古墳が活用されたと知ってみると、古墳がぐっと身近になるのではないでしょうか。
お城の歴史は脈々と続いています。
お城は、時代を自由に行き来できるタイムマシーンなのだと改めて感じました。
ぜひ古墳で、戦国時代とその先の古墳時代にも思いを馳せてみてくださいね。
では、また!