2020大河ドラマをもっと楽しむ 明智光秀ゆかりの城の話

福知山城
福知山城(京都府福知山市)

2020年のNHK大河ドラマは、明智光秀が主人公の『麒麟がくる』です。

光秀の名でまず思い浮かぶのは、やはり主君・織田信長を襲撃した「本能寺の変」でしょう。
なぜ光秀がクーデターとも言える大胆な行動をとったのか。
その真相は、信長に対する怨恨説や光秀の野望説、足利義昭による黒幕説、はたまた秀吉や家康が黒幕だとする説や、イエズス会陰謀説に室町幕府の再興説など数多くありますが、未だ闇の中。

ドラマでは、本能寺の変に至るまでの光秀の人生と心の動きがどう表現されるのか気になるところですが、ぜひ登場する(であろう)光秀ゆかりの城にもご注目ください。

光秀が生まれた城

光秀が生まれたとされる城は、岐阜県に2城あります。
可児市の「明智城」と、恵那市明智町の「明知城」です。
光秀は美濃の守護を務めた土岐氏の出身と言われていますので、土岐氏の城でもあった可児市の明智城が有力かもしれません。

明智城
明智城(岐阜県可児市)

『美濃国諸旧記』によると、明智城は、弘治2年(1556)に光秀の叔父・光安が城主だったとき、稲葉山城の城主・斎藤義龍の攻撃を受けて落城したとされています。
このとき光秀は20代後半。
義龍は「美濃の蝮(マムシ)」と恐れられた斎藤道三の息子です。
明智城には、この戦いで戦死した明智軍の7人の武将を葬ったと伝わる「七ツ塚」が残されています。

信長の家臣時代の城

坂本城
坂本城(滋賀県大津市)

「坂本城」は、比叡山延暦寺の焼き討ちのあと、信長の命によって光秀が元亀3年(1572)に築いた、延暦寺の監視のためのお城です。
光秀と交流のあった公卿の吉田兼見が記した『兼見卿記』によると、坂本城には信長の安土城天主よりも早い時期に天守があったとされています。
現在は石碑が残るだけですが、その石碑の背後に迫る比叡山を見上げると「なるほど、だから光秀はこの場所に城を……」と、時代を超えて納得することができるはず。

黒井城
黒井城(兵庫県丹波市)

光秀の生涯で最も苦労した信長の命令は、信貴山城の戦いや有岡城の戦いを挟みながら、およそ5年の歳月を掛けて成し遂げた丹波地方の攻略でしょう。
「丹波の赤鬼」の異名を持つ赤井直正の「黒井城」と、信長を裏切った波多野秀治の「八上城(兵庫県丹波篠山市)」のふたつの山城に挟まれて、光秀は苦戦を強いられました。
黒井城には、美しい野面積みの石垣が残っています。

金山城
金山城の鬼の架け橋

この黒井城と八上城の連携を分断するために光秀が築いた城が、丹波篠山市と丹波市にまたがる「金山城」です。
現在では「鬼の架け橋」という奇岩が名所のハイキングコースになっていますが、石垣や空掘などの遺構が残る戦国時代の山城です。
標高約540mの本丸からは黒井と八上のふたつの城が一望できます。
時代は変わってもこの山並みは昔のまま。
ドラマでも、睨みを利かせる光秀の姿が再現されるかもしれません。

京都府の「亀山城(亀岡市)」や「周山城(京都市)」、「福知山城(福知山市)」は、この丹波攻めで功績をあげた光秀が、信長から拝領した領地の城です。
この地方の拠点として築いた亀山城や、山頂に築かれた総石垣づくりの周山城と、城づくりの天才でもあった光秀の城は、魅力的で見どころがたくさんありますよ。

福知山城
福知山城・天守台の石垣

福知山城は、全国的にも大変珍しい「転用石」を多用した城です。
転用石とは、五輪塔などの石材を石垣に活用した石のこと。
すでに加工されている転用石を使うことで、急ピッチで城を築いたのではないか言われています。
信長の安土城では石仏が利用され、世界遺産の姫路城では石棺などの石材が使われていますが、これほどの数の転用石を活用するのは本当に稀なこと。
500個もの転用石が見つかったという天守台の石垣は、ぜひその目で見たい逸品です。

光秀の上司・信長の城

岐阜城
岐阜城(岐阜市)

光秀の上司・信長の城もドラマの舞台になるのではないでしょうか。
光秀が信長の家臣になった時代を考えると、「岐阜城」と「安土城(滋賀県近江八幡市)」が登場するでしょう。
戦国乱世真っ只中の城のつくりと、近世城郭のはじまりと言える安土城が、ドラマの中でどのように表現されるのかも注目したいポイントです。

光秀の娘たちの嫁いだ城

勝竜寺城
勝竜寺城(京都府京都市)にある細川忠興と玉の像

光秀の娘たちが嫁いだ城も登場するかもしれません。
光秀の娘というと、細川忠興に嫁いだ、玉ことキリシタンのガラシャが有名でしょう。
忠興と玉は長岡京市の「勝竜寺城」で新婚生活を送りました。
現在の勝竜寺城は公園に整備され、優しく微笑む忠興と玉の銅像があります。

諸説ありますが、光秀には玉のほかにも、信長の甥の津田信澄に嫁いだ娘や、荒木村重の子・村次に嫁いだ娘、筒井順慶の養子・定次に嫁した娘もいたようです。
ドラマでそれらの関係性に触れるのかも気になるところです。

まとめ

時代劇は、その時代の風習や文化を容易に知ることができ、理解を深める手助けになる貴重な映像です。
今回の時代考証は、戦国時代史研究の第一人者・静岡大学名誉教授の小和田哲男先生ですし、建築考証は、日本の城郭の構造をわかりやすく解説する建築学者で広島大学名誉教授の三浦正幸先生ですから、史実により近い世界観でつくられるのではないでしょうか。

ドラマの鑑賞とあわせて、「映像とリアル」の両方の城を知ると、歴史の奥深さと面白さがより実感できます。
全国5カ所(岐阜市・可児市・恵那市・亀岡市・福知山市)につくられる「大河ドラマ館」とあわせて、ぜひ「光秀ゆかりの城めぐり」も楽しんでみませんか?

野口

NHK大河ドラマ『麒麟がくる』は2020年1月19日(日)からスタートです。

この記事を書いた人

お城カタリスト