破風っていろんな種類があって面白いのね!
破風の魅力を知ってもらえて、嬉しいです!
前回の記事では、天守の美しさの秘密である「破風(はふ)」について詳しくご紹介しました。
↓詳しくはこちらの記事をご覧ください↓
今回は、破風によって天守のイメージがどう変化するかを見てみましょう!
そもそも破風の役割とは(簡単におさらい)
破風とは、屋根の端っこにある山形の部分のことです。
破風が雨や風・火災から屋根と建物を守ってくれることで、建物の耐久性は高くなります。
建物のために必要と言うけど……。こんなにたくさん付ける必要あるのかな?
なるほど、そうですね!
大切な建物だからとは言え、なぜ天守で破風を多用するのでしょうか?
破風に求められたもう一つの価値
前回の記事でご紹介したように、破風には4つの種類がありました。
(入母屋破風・切妻破風・千鳥破風・唐破風)
建物を保護する役割は同じでも、デザインが複数ある点が破風の大きな特徴です。
このデザイン性の高さこそが、破風に求められたもう一つの価値です。
よく見ると、装飾性をさらに高めるために、左右の破風板が交わる頂点の部分には「懸魚(げぎょ)」という華やかな飾りまでつけられています。
懸魚については別の記事で詳しくご紹介しますね。
天守を築いた大工さんは、もともと神社仏閣の工事を担う、宮大工さんです。
破風は、神社や寺院においても、装飾のために重要な構造だったでしょう。
入母屋破風や唐破風など、神社仏閣に使われた要素を取り入れて、美しい天守が完成しました。
「同じ天守はひとつとしてない」と言われるように、天守のデザインやイメージは多種多様です。
破風を装飾性の高いアイテムとして重要視していたからこそ、印象が劇的に違う「唯一無二の天守」が完成したのだと思います。
破風の配置で変化する天守のイメージ
では、破風によって、天守のイメージはどれだけ変化するのでしょうか?
ここからは、「現存天守」を例に、破風の配置で変化する天守のイメージを比べてみましょう。
CASE1・姫路城の場合
姫路城の天守は、慶長14年(1609)に建てられた5重6階地下1階の、31mを超える現存天守の中で一番高い天守です。
白い漆喰の壁がまるで白鷺(しらさぎ)のように美しいところから、別名「白鷺城(はくろじょう)」と呼ばれます。
天守の破風に注目してみると、大きな「入母屋破風」と、入母屋破風を二つ並べた「比翼入母屋破風」や「千鳥破風」、破風の中ではいちばん格式が高い「唐破風」と種類もたくさん使って、より華やかさを演出しています。
破風の効果によって、白壁の美しさと天守の優雅さがさらに増しているのが実感できるのではないでしょうか。
CASE2・松本城の場合
松本城は、慶長20年(1615)に建てられた、姫路城に次ぐ25mの高さの5重6階の層塔型天守です。
層塔型天守は、本来、最上階の入母屋破風以外に破風がなくても建物が完成する、シンプルなつくりをしています。
↓層塔型について詳しくはこちら↓
姫路城の白鷺城に対し、松本城は漆黒のその姿から「烏城(からすじょう)」とも呼ばれます。
使われている破風は数が少なくて、「唐破風」と「千鳥破風」だけ。
黒い漆塗りの外壁を際立たせるシンプルな破風の配置が、潔く力強いイメージを強調しているようです。
CASE3・彦根城の場合
大型のものでなく、一般的な大きさの天守ではどうでしょうか?
彦根城は、慶長11年(1606)に完成した、3重3階地下1階、高さ15.5mの望楼型天守です。
松本城のように高さがなくても、彦根城の天守は無骨で男性的なイメージを表現していると思いませんか?
その印象をつくる最大の要因は、破風の数の多さです。
同じサイズの天守なら、1面に1個か2個ずつで合計6〜8個くらいが一般的な破風の数だと思うのですが。
彦根城はおよそ3倍の、なんと18もの破風がつくられています。
え?! 18も!
使われている大部分の破風は「切妻破風」です。
その切妻破風にシンプルな「梅鉢懸魚」で装飾して、より凛とした緊張感を漂わせます。
その勇ましさを緩和するのは、柔らかな曲線の「唐破風」と「華頭窓(かとうまど)」。
華頭窓は、神社仏閣でも見ることができる釣り鐘のような丸みのあるデザインの窓です。
どうしてこんなにたくさん破風をつけたの?
そうですね。
いくらデザイン性を重視したとは言え、この数は多いような気がします。
少し話がそれますが、彦根城の天守に破風が多い理由をご紹介しましょう。
彦根城の天守は、大津城(滋賀県大津市)の天守の木材を再利用して建てたと言われています。
大津城の天守は、4重5階の天守だったと伝わりますので、3重3階の彦根城天守よりも大きな建物でした。
もしかすると、大きい大津城の廃材を利用したために、屋根の数が多くなり、破風が多くなったのかもしれません。
実際に彦根城の天守に入ってみると、同じ大きさの天守より太い木材が使われていることが分かります。
この太い木材の理由は、大津城の木材を再利用したからだと言われています。
なので、断定はできませんが、彦根城の破風の数が多いのも大津城の再利用した木材と関係がありそうです。
CASE4・宇和島城の場合
さて、彦根城と同じくらいの大きさの、ほかの天守も見てみましょう。
宇和島城は、寛文6年(1666)頃につくられた3重3階の層塔型天守です。
大きさは、彦根城より20cmほど高い15.7m。
使われている破風は、「千鳥破風」と「唐破風」です。
千鳥破風をふたつ並べて「比翼千鳥破風」にして格式を高めていますが、使われている破風の種類が少ないので、とてもシンプルでスッキリとした印象に感じます。
いかがでしょう。破風の配置や種類によって、天守の印象が変化することを感じていただけましたか?
もし破風がなかったら?
では、もし破風がなかったら、天守の印象はどうなるでしょう?
上の写真は、昭和39年(1964)に復元された、島原城の天守です。
島原城は、層塔型天守という種類の天守で、最上階の入母屋破風以外は破風のない構造の天守です。
このシンプルな潔さが島原城の美しさなのですが。
もっと破風をつけたらいいのにー
あはは、そうですね。ちょっと物足りないなーって気もしますね。
天守に破風がないと、お寺の五重塔のように、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
私たちは、破風があるものを「より天守らしい」と、とらえているのかもしれませんね。
まとめ
破風にはデザインの違いから4つの種類があります。
そのデザイン性の高さが、破風に求められた付加価値です。
私たちは破風があることで、天守をより「天守らしい」と思うようです。
天守ってどれも同じに見える気がするなぁ……
そう思ったあなたも、破風の存在を知ったことで、だいぶ印象や雰囲気が違っていることに気づいたでしょう。
次にお城に行くときは、ぜひ天守の隅々までを眺めてくださいね。
天守の一面だけでなく、天守の周りをぐるりと歩いて、いろんな角度から眺めてみましょう。
同じ天守でも、破風の配置が違うので、見る角度によって違ったイメージだと気づくはずです。
そして、ひとつの天守でなく、違ったお城の違った天守とも見比べてみましょう。
そしてもちろん「この三角の部分はね、破風って言うんだよ〜」と教えてあげてくださいね。
破風をひとつ知っているだけで、単なるお城観光が、何倍にも何十倍にも楽しめること間違いありません!
あなたの楽しいお城ライフを応援しています♡
では、また!