お城への相次ぐ「ひっかき傷」被害に思うこと

松山城
松山城(愛媛県)

2021年の新年早々、悲しいニュースが続きました。
現存する天守や建造物がある複数のお城で「ひっかき傷」の被害が相次いだのです。

木製の窓枠や壁など被害の場所は様々ですが、細い線状の傷が確認されています。

ひっかき傷・被害の概要

各お城の被害状況は次の通りです。

  1. 松山城(愛媛県):計17カ所
    国指定重要文化財の現存天守に6カ所、内門や小天守など5つの復興建造物に11カ所に傷を確認。うち1カ所には文字もあった。(2021年1月4日発表)
     
  2. 高知城(高知県):計27カ所
    2020年営業最終日(12月25日)の閉館後に6カ所発見。1月1日の営業再開から5日までの間にさらに見つかる。現存天守・本丸御殿の懐徳館など4つの国指定重要文化財で24カ所・トイレ3カ所に傷を確認。(2021年1月6日発表)
     
  3. 岡山城(岡山県):計30カ所
    復元天守の地下1階から地上6階までの全フロアで計23カ所。国指定重要文化財の月見櫓の扉と壁に3カ所など。うち1カ所は1mの傷も。(2021年1月18日発表)
     
  4. 福山城(広島県):計9カ所
    国指定重要文化財の筋鉄御門に7カ所、市指定重要文化財の鐘櫓に2カ所。これにより本丸への立ち入りを当面禁止している。(2021年1月19日発表)

ひっかき傷の被害を知って感じたこと

高知城
高知城(高知県)

ニュースを耳にしたときは、

え!? どうしてこんなことが起こるの!
天守だけでなく櫓や門だって、城の建造物がどれほど価値のあるものか分からないの?
江戸時代以前から現存してるってだけでなく、それが補修されて、守られ、継承されてきた意味が分からないの?!
再建された天守だって、大事な日本の財産なのに……

と、とても悲しく、憤りを感じました。

けれど冷静になると、お城ファンの私たちと、お城を知らない人たちの間には「大きな食い違いがあるのかもしれない」という気持ちが大きくなりました。

歴史あるものに、どれほどの価値があるかということ。
今だけでなく、100年も200年も前から補修を繰り返して継承した意味
神社やお寺のように神様や仏様がいなくても、お城が守り続けられている奇跡

そんな、お城ファンなら当たり前に理解できることが、理解できないのかもしれない。

その奇跡とも言えるお城の価値に気づいていないのかもしれない。

そう思ったのです。

お城に対する私の思い

岡山城
岡山城(岡山県)

私がお城に出会ったのは、人生のどん底のときでした。
歴史もお城もよく分からなかったけれど、お城に行くとなぜだか心が満たされたので、心のままにお城をめぐり続けました。

自分は空っぽで何も持っていないと自己否定ばかりしていた私ですが、お城めぐりをするうちにとても大きな「宝」を持っていることに気づいたのです。

それは、

「私は日本人だ」ということ。

天守を美しいと感じる、美意識を持っていること。
変化に富んだ四季に育まれた、豊かな文化があること。
ご先祖様から受け継いだ、歴史があること。
「いただきます」「ごちそうさま」「おかげさま」「もったいない」など、独特な日本人の価値観を持っていること。

「日本人」というアイデンティティを手にしている私は、それだけで満たされているのではないかと感じたのです。

私はお城に救われました。
大げさではなく、お城のおかげで前を向いて生きるチカラをもらいました。

だから、私はお城に恩返しがしたいと思っています。

お城を未来に継承したい、残したい。
そのためにお城ファンを増やしたい、底上げしていきたい。
そう思って、私は活動しています。

お城は未来の子どもたちに継承したい「日本の宝」です。

現存だから貴重なのではなく、どんな天守にも建物にも人々の想いが詰まっています。

天守や建物もない、山の中にひっそりと残る土のお城でも、人が心を寄せなければ、荒れ果ててなくなってしまうかもしれません

お城は人の心のつながりによって、今に継承されていると思うのです。

お城なんてと、他人事と思わないでください。

今、私が日本人でいるということは、お城の時代の人々とも繋がっているということです。

もしかしたら、私のご先祖さまは石垣の石を運んでいたかもしれない。そう強く思うのです。

まとめ

福山城
福山城(広島県)

今回のひっかき傷の被害で、「日本の宝」であるお城の存在に、まだ気づいていない人がいることを改めて認識しました

もっともっとお城の魅力と楽しみ方を届けたい。
こんなにも面白いお城の世界を、日本中の人に、世界中の人に知って欲しい。
そんな想いが、より大きく、より強くなりました。

2020年の12月に、お城好きが集まって、お城のことを語り合う「オンラインお城Bar」という、オンラインイベントの第1回目を開催しました。

コロナの影響でお城にも行けず、お城好きの仲間たちともつながることが難しかったこの時期に、どうしてもつながりを保ちたくて、つくり続けたくて、思い切って始めたイベントです。

オンラインお城Barでは、参加者さんそれぞれの「お城の楽しみ方」を共有しながら、知識と情報を交換する交流を続けています。

お城ファンがどうしてこんなにお城に夢中になるのか。
お城の何が面白いのか。
あなたも、その目で確かめに来てください。

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一緒にお城ファンの輪を広げましょう。

では、また!

この記事を書いた人

お城カタリスト