先日ある方とお話をしたことで「お城」ってなんだろう? 「城跡」ってなんだろう? と、改めて考えさせられる出来事がありました。
今回は「お城」と「城跡」の違いについて私が考えたことをご紹介します。
「城跡」と「城址」・「城趾」の違いについても記載しています。
奈良県出身の方との会話にハッとする
お会いしたのは、奈良県出身のラジオパーソナリティーをされている女性の方。
彼女との会話の中で、こんなやり取りがありました。
奈良にお城ってありますか?
大和郡山城とか日本三大山城の高取城とか、いいお城がたくさんありますよ
う〜ん。でも石垣しかないですよね。それってお城じゃなくて城跡ですよね……(とても残念そう)
ええ。そうですが、城跡ももちろんお城ですよ
彼女の残念そうな表情を見て、「お城ならOKで城跡はNGなのかな。残念だな、すごく。お城も城跡もOKなら、もっと楽しめるのに。もったいないなぁ。」と思いました。
奈良の魅力を発信したい! と話されていた方だったので、余計にショックな出来事でした。
お城って、何だろう?
天守のあるお城が「お城」で、天守のないお城は「城跡」であって、お城ではないと考える方は、結構多くいらっしゃいます。
お城といえば天守をイメージするのは、当然のこと。それはそれで仕方のないことです。
けれども、必ずしもお城に天守がある必要はありません。「お城=天守」ではないのです。
天守があってもなくても、「城跡」も、もちろん「お城」です。
乱暴に言ってしまえば、いま日本にあるお城は、みーんな「城跡」です。
なぜなら、いまあるお城は、防衛拠点とか政治的拠点と言うような、お城本来の機能が働いていないからです。言わば「無用の長物」。過去のものなので「跡」です。
それでも。姫路城とか大阪城を、あまり「城跡」とは思いませんよね。
天守があるお城を城跡と思わないのは、きっと、私たちが持っている「お城のイメージ」とぴったり一致するからでしょう。
そして、今でも活発に人の出入りがある「現役のお城」だからなのだと思うのです。
「現役のお城」になるには?
たくさんのお城をめぐっていると、お城ごとに管理のされ方が違うことに驚きます。
きれいに整備されているお城は、やはり観光客が多かったり、地元の方に憩いの場所として愛されていたりと、人の出入りがとても活発です。
反対に、山城のようにあまり人の手が入っていないお城は、人間よりも動物に出会う方が多いくらい。
それでも、自治体が発掘調査を行なったり、保存会の方が整備作業をされたりしている山城は多くあります。
どれだけ人を集めるかが、「城跡」ではなく「現役のお城」と認識されるポイントになるのかもしれません。
お城には、観光の目玉になるだけの価値があると私は思っています。
お城が観光資源だと気づいたなら、お城はもっともっと注目されて、整備や保存が進むのではないでしょうか。
お城が、お城本来の機能を果たしていない無用の長物だとしても、その価値は日本の文化と歴史にとって必要不可欠なものです。
そして、人の手が加わらなければ、今の姿を保てません。どんなお城もやがて朽ち果ててしまうでしょう。
ひとつでも多くのお城が未来に継承されるよう、できる限りの行動をしていきたいです。
今あるお城をひとつでも多く「お城」として認識してもらいたい。その気持ちを持ち続けながら、お城の魅力を発信し続けたいと思います。
城跡と城址・城趾の違い
「城跡」と「城址」・「城趾」は、同じ意味と思って大丈夫です。
厳密には「趾」には、建物の土台や基礎の意味があるので、それを強調したいときには「趾」を使うのかもしれません。
「址」と「趾」は常用外の漢字なので、常用漢字の「跡」を使うことが多いのです。
もしかしたら、お城を管理されている方なども、厳密に区別して使っているとは限らないかもしれません。
なので、文字の違いに左右されず、何かのあとや残ったものなのだなと捉えてみてくださいね。
では、また!