彦根城|外壁はがれた多聞櫓のその後をレポート

野口
先月の超大型台風で、彦根城が被害を受けたことを知っていますか?

『多聞櫓(たもんやぐら)の外壁はがれる』それは私にとって衝撃的なニュースでした。
その多聞櫓の「いま」を知りたくて、彦根城に行ってきました。

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大手御門跡から天秤櫓を通って、本丸へ向かうコースで登ります。

彦根城
紅葉も見頃の、いい天気のこの日。
美しい石垣と、現存する天秤櫓や太鼓門を眺めながら天守へ進んでいくのは、わくわく心浮き立つ時間です。
紅葉のベストシーズンであることと、12月10日まで国宝・彦根城築城410年祭が開催されていることもあって、たくさんの人で彦根城は賑わっていました。

彦根城 天守
いくつもの破風に彩られた国宝の天守は、まさに輝くばかりの美しさ。

彦根城 多聞櫓
そして、こちらが先月の台風で被害を受けた多聞櫓です。

城子さん
あれれ?どこも壁なんてはがれていないけど?

そうですね。本丸から眺めたこちら側はとても綺麗な状態です。
被害を受けたのは、ここからは見えない北側の外壁になります。

彦根城
写真の右手から、多聞櫓・附櫓(つけやぐら)・天守です。
この3つの建物がすべて「国宝」に指定されています。
現在の多聞櫓は、天守への入口として使われているので、彦根城に行ったことがある方なら入ったことのある建物でしょう。
靴の脱ぎ履きに気を取られてしまうところですが、ぜひ多聞櫓の内部にもご注目ください!

彦根城
天守には入らずに、まずは多聞櫓の北側の様子を確認します。
紅葉に彩られた華やかな西の丸とは対照的な、悲しい光景がそこにはありました。
写真の右手から、天守・附櫓・多聞櫓です。

壁がはがれた原因は、劣化していた漆喰の隙間に台風の豪風雨が入りこんだためだと考えられています。漆喰壁が落下して怪我をしないように、多聞櫓の下は立ち入れないようガードされていました。

彦根城
これが台風から1ヶ月後、11月25日の多聞櫓の様子です。
下の写真と見比べてください。

彦根城 多聞櫓
朝日新聞DIGITALより

こちらは台風21号が通過した直後、10月23日のネットニュースの写真です。
外壁のはがれが広がっていなくて本当によかった! ほっと胸をなでおろします。
気温が低い時期は漆喰の施工ができないため、この壁の修復は来年の春以降になるのではないでしょうか。

彦根城
この手前の門は、埋御門(うずみごもん)。裏口である搦手(からめて)の黒門側から登ってきたときに、最初に通過する門です。その上前方に、多聞櫓が見えますね。
埋御門は、人が2・3人並んで通れるくらいに小さくて、幅の狭いつくりをしています。
お城の設備は、最強の防衛のために理由があってつくられているのですが、この多聞櫓の存在も例外ではありません。

彦根城
これは、多聞櫓の内部から眺めた、埋御門の様子。
埋御門に殺到する敵を想定して、真正面から狙える場所に多聞櫓が建っているのがわかりますね。この臨場感は、実際にお城に行って、自分の目で見て感じることがいちばんでしょう。

彦根城 玄宮園からの眺め
内部から多聞櫓の役割を体感したあとは、埋御門・黒門を経由して、大名庭園の玄宮園へ。
玄宮園から眺める天守の中心には、天守にそっと寄り添う多聞櫓の姿があります。
このアングルはカレンダーの写真に使われるほどに有名で、おすすめの撮影ポイントです。

彦根城
彦根城をはじめ、いま残っているお城は、いくつもの困難を乗り越えて、たくさんの人に守られた結果、いまの姿があります。単なる偶然だけでなく、継承する人々がいてくれたからこそ、奇跡的に残っているのです。

この多聞櫓も彦根市をはじめ、守り支えてくださる方が、修復して復活させてくれるでしょう。その応援のためにも、私は彦根城のいまを発信して、何度も訪れたいと思います。
現地に行って体感すること、お城について考えることは、「心の募金」ではないでしょうか。

野口
ぜひ彦根城で多聞櫓の「いま」を見てください。
こんなときに……ではなく、こんなときだからこそ、見える景色があると信じています。

この記事を書いた人

お城カタリスト