お城カタリストの野口です。
先日(2018年2月12日)、続日本100名城の選定記念「飯盛城フェスタ」へ行ってきました!
飯盛城フェスタとは
「飯盛城フェスタ」は、続日本100名城の選定記念で開催された大東市主催のイベントです。
飯盛山にある大東市立青少年野外活動センターで、滋賀県立大学の中井 均先生の講座を拝聴し、さらに中井先生が現地をご案内してくださるというスペシャルな内容でした!
まずはJR野崎駅に集合して、観光ボランティアガイド「やまびこ」さんのご案内で、飯盛城の近くにある青少年野外活動センターを目指します。
野崎駅から15分ほど。野崎観音(慈眼寺)に到着です。
トイレ休憩と登山前のストレッチをして、野崎観音の裏手のハイキングコースから登ります。
(青少年野外活動センター以外、この先にはお手洗いがないのでこちらを利用しましょう)
飯盛山を登りはじめて15分、かつて飯盛城の出城になっていた「野崎城」に到着。
ここは大阪市内が一望できて、とても気持ちがいい絶景ポイントです。
何組かのご家族がお弁当を広げて楽しんでいました。
野崎駅からゆっくり歩くこと1時間20分。大東市立青少年野外活動センターに到着です。
持参したお弁当で昼食にして、午後からのセミナーに備えます。わくわく。
セミナー「日本城郭史における飯盛城の価値」
待ちに待った、考古学者で城郭研究の第一人者のひとり:中井 均先生の講演です!
なぜ飯盛城が、続日本100名城に選ばれたのか? なぜ飯盛城の城主だった三好長慶は「信長に先立つ天下人」と呼ばれるのか? を、飯盛城のつくりから解説してくださいました。
戦国時代のお城のつくりは、戦に備えるための「山城」と、居住エリアの「麓の館」と、ふたつのエリアで成り立つのが普通です。けれど飯盛城には、麓の館跡の伝承がないのだそう。
先生によると、長慶は、戦国の覇権争いが恒常的になることを見越して、山城の中に「防御機能」だけでなく「住居機能」も兼ね備えた「新しいタイプの山城」を構築したのではないか? とのことでした。
飯盛城では「高櫓」エリアを防衛に「千畳敷」エリアを住居にしていたと推測されています。
また、戦国時代の山城というと、ほとんどが「土づくりの城」で、土木工事が中心でした。
それに対して飯盛城は、東側全域はほぼ石垣のお城なのだそう!
16世紀半ばのお城では、最も多くの石垣を使ったお城だと評価されているそうです。
天下を狙った信長が、小牧山城→岐阜城→安土城と、権力の象徴としての「見せる城」を完成させてゆきますが、すでに長慶は信長が小牧山城に入るよりも前に、芥川山城や飯盛城で石垣つくりの「見せる城」を完成させています。
このお城のつくりから、長慶が「信長に先んじて天下を狙った人物」・「先駆者」だったと評価されるそうです。なるほど!
先生のお話を踏まえて、飯盛城を歩くのがとても楽しみになりました!
中井先生のお話は、とてもわかりやすくて丁寧で大好きです。資料も充実でホント嬉しい。その上、先生が歩いて作りあげたという精巧な縄張図までいただきました! ありがとうございます!
中井 均先生による現地解説
続いては中井先生が解説してくださる、飯盛城のお城見学です。
縄張図と実際のお城の様子を見比べながら歩きました。楽しい!
こちらは飯盛城南側の「虎口」部分。
この大きい石の部分が虎口の隅の部分の石垣で、そこから右手奥に向かって、ぐるりと石垣が囲んでいたと推測されるそうです。
お城を歩く中井先生の表情は、さらに生き生き輝いてました! やっぱりお城が好きなのですね。
虎口から登った先にあるのは、居住エリアと推測される「千畳敷」。
千畳敷は3段構造になっていて、ラジオやNHKの送信塔のある場所が一番上になります。
こちらでは建物の基礎として使われた「礎石」が発掘されているので、館があったと推測できるそう。
調査によって当時の様子が判明するって、とても興味深いですね。
現在も南側と東側では発掘調査が行われていました。今後の調査にも期待大です。
次なるエリア「高櫓」跡には、「土橋」を通って登って行きます。
高櫓跡は、防衛の中心的拠点だった場所です。
そのため、高櫓の周囲に大きな「竪堀」や「土橋」を配置して、高櫓エリアに簡単に敵が侵入できない構造となっていました。
こちらの「楠木正行(くすのきまさつら)公の銅像」があるエリアが「高櫓」跡です。
楠木正成の息子である正行は、南北朝時代に南朝方として後醍醐天皇のもと戦っていました。
飯盛山は「四條畷の戦い」があった場所なので、正行公の銅像が建てられているのでしょう。
先生が説明される前方にあるV字の部分が「堀切」と呼ばれる山城の遺構です。
堀切は、ひと続きの山を大規模な土木工事で分断して、敵からお城を守るしくみです。
左側の山肌の様子からも、飯盛山は石がたくさんある「石の山」だったことがわかります。
こちらは、「御体塚(ごたいづか)郭」と「史跡碑郭(通称)」の間にある城内でも最大規模の堀切です。
御体塚郭に入る手前の下段には、この石垣がありました。
このエリアは四條畷市なので、四條畷市の担当の方がご案内くださいました。
石垣の高さは2mほど。自然石を積み上げた「野面積み」なので石垣を高く積むことはできません。
そのため石垣の上段に犬走りのようなスペースをつくり、次の石垣を積み上げる、段築構造になっているそうです。
この石垣のある方向が、飯盛城の東側エリアです。東側の麓には「権現川」が流れています。
中井先生によると、東側に石垣を多用したのは、権現川を通行する人々に対して石垣の城を効果的に「見せる」ため、権力を誇示するためだったそう。
そんな圧巻の景色見てみたいな。
こちらが「御体塚郭」跡エリア。
この郭に、長慶の亡骸を死後の3年間、仮埋葬していたと伝わります。
塚とみられる部分に石が積み重ねられていたので人工的なものと思ったけど、これは自然がつくったものだそう! びっくり。
御体塚郭でも発掘調査が行われていました。ここでは小さなお皿が発見されたそうですよ。
礎石出てくるかなー? 館があったかなー? 期待して調査結果を待ちたいですね。
こちらは御体塚郭を下った先にあった石垣です。端っこの部分は大きな石で補強しています。
見上げたり、見下ろしたりしてみると、お城のあちこちで石垣が発見できますよ。
北側の「三本松郭」からは、270度の素晴らしい眺望が堪能できます。
正面には飯盛城に入城する前に長慶が暮らしていた芥川山城も見えました。
長慶に思いを馳せながら、芥川山城にも、また行ってみようと思います。
『飯盛城 拠りて 長慶 覇をきそう』
長慶が飯盛城で思い描いた天下の野望を思いながら、長慶も眺めたかもしれない景色を楽しみました。
十分に堪能して、さぁ、下山しましょう。
こちらは本郭東側の石垣です。石垣の一部が崩れているので、石垣の中の裏込石をみることができます。
現在ハイキング道になっているこの通りは、昔は「帯曲輪」として使われていた場所だそう。
豪華なハイキングコースですね!
その後は、中井先生やスタッフのみなさんとお別れし、野崎駅へ向けて下山しました。
まとめ
中井先生は、お城の縄張図を書くときに、お城を隅々まで歩き回ってつくるのだそう。
下を見て曲輪を見つけたら、道なき道の斜面を降りて行って歩幅で測量するのだとか。
「見つけたら行かなきゃならんからなぁ〜。もうしんどいからいくつも縄張図はつくれないよ」と笑顔で話されていました。
中井先生にお会いして、やっぱり先生もお城が大好きで、お城を守りたいって思ってるってことがヒシヒシと伝わりました。
先生は先生のフィールドでお城の情報を発信して、継承する活動をされています。
先生のように専門家ではない私は、専門家ではない私だから伝えられることを届けたいと改めて思いました。
現地で解説してくださった中井先生、山頂までご案内いただいたボランティアガイド「やまびこ」のみなさま、大東市と四條畷市のスタッフのみなさま、とても学びの多い、有意義な体験ができました! ありがとうございます!
中井 均先生の著書と飯盛城に関する本
城館調査の手引き|中井均(山川出版社)
このタイトルなので専門家の調査方法を知る本だと思いましたが、中井先生のお城の楽しみ方が満載で面白かったです。戦国時代と近世のお城の調べ方(=楽しみ方)だけでなく、縄張や天守の構造の解説や、山城の注目するポイントの詳しい説明や縄張図の書き方、そのときの持ち物に身近なお城の歩き方まで紹介されていて、とても楽しめます。写真も豊富でフルカラーなのも嬉しい。先生はやっぱりお城が大好きなんだなーと実感できるワクワクする1冊です。
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飯盛山城と三好長慶|仁木宏・中井均ほか(戎光祥出版)
中井先生のほか、近畿圏の城郭と文化を研究をされている先生方が書かれた本です。飯盛城や長慶だけでなく、近畿の文化や情勢などの時代背景にも詳しいので、信長に先駆けて天下を狙った長慶の行動の理由を考える手がかりになるのではないでしょうか。飯盛城だけでなく、私部城・高屋城・烏帽子形城など周辺のお城についても書かれており、縄張図があるものも。河内のキリシタンの動向も詳しいので、それを知りたい方にもおすすめの1冊です。
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続日本100名城公式ガイドブック|(財)日本城郭協会 監修(学研プラス)
飯盛城は、続日本100名城の160番のお城です。この本には飯盛城のような山城が多く掲載されていて、日本100名城よりもさらにお城LOVE・お城マニアな方向けの魅力的なお城が満載です。山城の歩き方や石垣の楽しみ方などの特集も充実しています。大きくて読みやすいB5判のガイドブック。切り離して持ち運べるスタンプ帳つきです。小型版のガイドブックもありますので、お好みでお選びください。
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では、また!